●平成28年第1回定例道議会 自民党・道民会議 代表質問答弁要旨
柿木 克弘 議員(美唄市選出)
道産食品の輸出拡大へ向け大きな道筋
昭和43年1月26日生まれ。美唄東高校、札幌大学経営学部卒業。国会議員公設秘書、美唄市議会議員を経て、平成11年北海道議会議員に初当選。現在5期目。道議会建設委員長、同道州制・地方分権改革等委員長、同自民党・道民会議政策審議委員長、自民党道連幹事長などを歴任。現在、自民党道連副会長。
第1回定例道議会は2月26日から3月24日まで開かれ、3月3日には自民党・道民会議からは柿木克弘議員が代表質問に立った。柿木氏による代表質問は3度目。道産食品輸出目標額の引き上げ、北海道新幹線開業による二次交通の確保、空港民営化、いじめ問題、道民の安全・安心の確保など、道政上の重要課題について高橋はるみ知事らに見解をただした。
柿木議員 知事は道民が夢や希望を持って住み慣れた土地で暮らすことのできる持続可能な地域づくりを進め、暮らしや産業の基盤づくりを推進していく、という基本姿勢を示した。市町村との役割分担や振興局のあり方、施策の実効性を担保するための評価・検討のあり方を総合的に検討していく必要があると考えるが、どのように取り組んでいくのか。
高橋知事 人口減少により小規模な自治体では行政サービスの提供が困難となることも懸念されており、自治体間の機能分担や相互補完システムのほか、郵便局やコンビニなどを活用した地域ネットワークの検討を進め、創生戦略や総合計画が目指す姿の実現に向けた施策を全力で展開していく。
柿木議員 本道が目指す姿の実現に向けた施策は、創生総合戦略、強靱化計画のほか、各分野ごとの計画に基づき進められる。新しい総合計画に掲げる目指す姿の実現に向けて、どう取り組んでいくのか。
高橋知事 計画の実効性を確保するため、推進本部を新たに設置し、その下に外部有識者を含めた組織を整備し、機動的な実施体制を構築する。
柿木議員 知事は平成30年に道産食品輸出1000億円の達成を目指しているが、新総合計画案では平成37年度の計画期間終了時で1000億円以上としている。もう少し攻めの指標を設定すべきではないか。
高橋知事 1000億円をひとつの通過点としながら、10年後には昨年実績の約2倍にあたる1500億円程度を目標とし、全力で取り組んでいく。
柿木議員 昨年の道産食品輸出額は773億円で、前年に比べ16%増加しており、当初の目標は達成できる状況となっている。輸出環境の整備や販路拡大、物流体制の整備が重要と考えているが、どう進めていくのか。
高橋知事 加工施設のHACCP取得、輸出対応と畜場の整備、輸出向け品種の栽培技術の確立などの輸出環境の整備を進めるとともに、海外アンテナショップにおけるテスト販売、鮮度保持技術を活用した低コスト物流の構築などを進めていく。
柿木議員 総合計画では外国人観光客300万人以上を目指すとしている。知事は速やかに具体的な手だてを明らかにするとの考えを示したが、どのようなものか。
高橋知事 観光地づくり、受け入れ体制の整備、効果的なプロモーションを柱として、目標値や主な施策を早い時期に公表する。新たに欧米からの誘客促進、地域DMO(観光地域づくり法人)の形成を進めていく。
柿木議員 昨年8月、ハワイ州の上下両院は北海道との姉妹提携提携の承認を州知事に求める決議を行った。平成26年に道がハワイ州との間で交わした覚書では、姉妹提携樹立を視野に入れた協力促進が強調されているが、交流をどう進めていくのか。
高橋知事 関係団体と連携し、青少年交流、経済や観光面の取り組みを進めながら、姉妹友好提携に向けた交流促進に努めていく。
柿木議員 国の制度では第3子の保育料は無償、第2子は半額の助成であるが、道の創生総合戦略・人口ビジョンに掲げる合計特殊出生率1・8の実現のためには、第2子の無償化は重要と考える。抜本的な対策に取り組む考えはないのか伺う。
高橋知事 不妊治療費、妊婦健診時の交通費の助成、多子世帯の保育料軽減などのほか、新年度に負担軽減策を検討する。
柿木議員 道はコンパクトなまちづくりや集落総合対策としてのモデル事業を推進しているが、取り組みが一体的に進められていない。持続可能な地域づくりに関する北の住まいるタウンの推進に、どう取り組んでいくのか。
高橋知事 買い物などの生活に不可欠なサービスの確保が求められており、地域課題を共有しながら分野横断的に取り組むとともに、福祉やエネルギーの地産地消の観点を踏まえたモデル市町村を選定していく。
柿木議員 国は首都圏の中高年齢者の地方移住を促進するため、健康でアクティブなコミュニティーづくりを目指す、生涯活躍のまち構想、いわゆる日本版CCRC構想を推進している。どう取り組んでいくのか。
高橋知事 ノウハウの提供や専門人材の配置、本道の特性に応じた取り組み指針の策定など、サポート体制を構築するとともに、庁内プロジェクトチームを活用し、効果的な取り組みを図っていく。
柿木議員 市町村が持続的に行政サービスを提供していくため、消費生活相談、職員研修、障がい者雇用などを共同で実施する事例がある。本道では圏域が広く、協働が難しい事務もあるが、北海道型地域自律圏の形成にどう取り組んでいくのか伺う。
高橋知事 振興局に設置した検討会議で議論を重ねるとともに、道と市町村の連携に関する情報を幅広く提供し、さまざまな形の自律圏としての活動を全道に広げていく。
柿木議員 職員数の適正化に伴い中堅職員が減少し、知識・経験の継承が難しくなる中、行財政改革の手法を見直す必要がある。業務改革、財政運営に関してトップが明確な指示を出すべきと考えるが見解を伺う。
高橋知事 ICTの利活用などにより事業の進ちょく状況を相互に確認できる仕組みを構築するほか、連携が求められる事業を検証し、翌年度の事業に反映させていく。
柿木議員 各市町村が取り組む道との協議や国への働きかけを3人の副知事がともに行い、人口減少への対応を支援してはどうかと考えている。副知事の事務分担に地区分担を加える必要について見解を伺う。
高橋知事 3人の副知事が地区分担に応じて市町村から国への要請活動を共に行うなど、「地域」という視点も加えて対応していく。
柿木議員 道は制度融資や補助金などを設けているが、担保力に欠ける場合は活用が難しい。知事は小規模企業振興条例の制定を公約にしているが、小規模企業の振興にどう取り組んでいくのか。
高橋知事 道の融資制度の充実、クラウドファンディングの普及、新たなファンドによる資金供給手法の検討を進め、地域経済の持続的な活性化に全力で取り組んでいく。
柿木議員 ものづくり産業の振興は、雇用機会の拡大をもたらし、人口流出にブレーキをかける。力強い地域経済の構築に重要なものづくり産業の強化、育成に向けてどう取り組むのか。
高橋知事 道総研や中小企業総合支援センター、ノーステック財団を中核に「ものづくりネットワーク」を構築し、企業をワンストップで支援するとともに、食品や機械、ITなどの産業間の連携により付加価値の高い製品開発を促進する。
柿木議員 本道の就業率は改善の兆しが見えていない状況にあるが、これまで3期にわたって雇用創出目標を達成しながら、就業率の改善につながっていないことをどのように認識しているのか。
高橋知事 本道の就業率は若者の離職率が高いことなどもあり、全国より低い水準が続いている。就業環境の整備、若者の職業観の醸成などを進め、多様な働き手が働く全員参加型社会の実現を目指す。
柿木議員 国は一般住宅に旅行者を有料で宿泊させる「民泊」の解禁に向けて、旅館業法の簡易宿泊所として位置づけ、最低の客室面積を33平方㍍から3・3平方㍍に緩和するとしている。どう取り組んでいくのか。
高橋知事 検討会を設置して地域や事業者のニーズを伺い、規制緩和などの検討を進め、北海道にふさわしい民泊のあり方を早期に取りまとめていきたい。
柿木議員 道民の夢であった北海道新幹線が3月26日に開業する。他地域への二次交通をいかに確保するかが課題であるが、どう展開していくのか。
高橋知事 来道者の移動状況をビッグデータを活用して調査し、航空機やバスなどの路線開設に必要な経費を支援する。
柿木議員 新幹線の札幌延伸は政府・与党の申し合わせで5年前倒しとなり、平成42年度末の完成を目指している。延伸の着実な実現に向けて、どのように臨む考えか。
荒川副知事 新函館北斗・札幌間は約76%がトンネルであり、掘削残土の受入地確保とともに、用地取得に時間がかかると懸念されている。沿線自治体、鉄道・運輸機構などと連携を強化していく。
柿木議員 新幹線開業に伴い、在来線の運行便数の減や駅の無人化・廃止が現実化し、通学生やお年寄りへの影響が懸念され、JR日高線は復旧の方向性が定まっていない。どう対応する考えか伺う。
高橋知事 地域の実情を踏まえた慎重な対応をJR北海道に強く求めていくとともに、日高線運行再開の協議を進め、地域交通の確保に向けて道の役割を果たしていく。
柿木議員 道は自治体や空港ビル関係者と、空港民営化についての意見交換を行ってきた。13の空港があるという本道の実情を踏まえ、どう対応するのか。
高橋知事 経済界などとの意見交換を行いながら、全道に波及効果が及ぶような民間委託についての提案を取りまとめ、実現に向けて鋭意取り組みたい。
柿木議員 知事はグローバル人財育成基金の創設を公約に掲げ、家庭の経済事情に配慮しながら進学を志す若者への支援や、スポーツや文化・芸術、科学技術などの分野で、世界で活躍できるスペシャリストを育成する考えを示した。どう取り組んでいくのか。
高橋知事 子供たちが置かれた環境によらず、夢に向かって挑戦する機会を増やしていくことは重要である。基金はオール北海道で設立することを目指しており、企業や関係団体などに働きかけを進め、平成28年度中の創設を目指して取り組む。
柿木議員 平成30年に行う北海道150年事業は、北海道を次の50年、100年を生きる人に引き継いでいくきっかけとならなければならないと考えるが、どう検討を進めるのか。
高橋知事 実行委員会を立ち上げ、事業計画をまとめていく。芸術や文化、スポーツなど、幅広い分野での展開が考えられることから、総合政策部に準備室を設置し、体制を整備する。
柿木議員 防災・減災の取り組みを進めるためには、道が対応できる職員を育てる必要がある。各振興局が対策本部の設営や情報収集などの訓練を少なくとも隔年で実施する必要があると考えるが、見解を伺う。
高橋知事 新たに振興局ごとに市町村なども参加する実践的な地方本部運営による訓練を実施することに加え、退職自衛官をアドバイザーとして任用する。
柿木議員 道内の半数近い市町村では専任の防災職員を配置していないか、配置されていても1人と聞いている。災害発生時に道の防災業務経験者、退職自衛官の知識・経験を活かすべきであるが、市町村支援にどう取り組んでいくのか。
高橋知事 新年度から防災研修を通じた人材育成に努めるとともに、市町村に防災業務に精通する道職員と退職自衛官を緊急派遣する制度を整備する。
柿木議員 避難期間が長期に及ぶ大規模災害の場合、高齢者や障がい者、妊婦や乳幼児などの避難場所の確保が重要である。国の指針ではホテルや企業の社屋を活用することが求められているが、どう取り組んでいくのか。
高橋知事 ホテルや旅館は居室や飲食の提供が可能であり、重要な避難先となることが期待できる。防災会議へのホテル関係者の参画を促進し、多様な避難先の確保に取り組む。
柿木議員 道管理の約5300の橋梁のうち、10年後には約3割、20年後には半数以上が建設後50年の耐用年数を迎える。社会資本が抱える課題をどのように認識し、取り組んでいく考えなのか。
高橋知事 強靭化計画やインフラ長寿命化計画を着実に推進し、維持管理や更新に必要な予算確保に全力で取り組んでいく。
柿木議員 「民族共生の象徴となる空間」は平成32年の一般公開に向けて、白老町で整備が進められている。象徴空間を活用し、どうアイヌ文化政策を進める考えなのか。
高橋知事 年間来場者100万人を目指す象徴空間の開業効果を、各地のアイヌ文化振興につなげていくことが重要と考え、具体的な方策を検討していく。
柿木議員 文化庁は東京オリンピック・パラリンピックまでの間を、文化政策振興の強化期間と位置付けた。道として、アイヌ文化など北海道ゆかりの文化プログラムを提案し、世界に発信すべきではないか。
高橋知事 開会式や文化プログラムでのアイヌ文化紹介を国などに要請するとともに、アイヌ古式舞踊の演目作成や人材育成に取り組んでいる。本道文化を世界に発信していく。
柿木議員 新国立競技場の設計理念は「木と緑のスタジアム」であり、森林認証を得たカラマツなどが使用されると承知している。道産木材の活用を積極的に働きかけるべきではないか。
高橋知事 施設整備に関わる企業などに対し、道産材の品質や性能のPRを行っており、本道のカラマツが使われるよう積極的に働きかけていく。
柿木議員 昨年度の児童相談所による相談対応件数は、全国8万8931件、全道3014件で過去最多だった。痛ましい事案を防ぐためには早期に適切な対応が大切だと考えるが、どのように取り組んでいく考えなのか。
高橋知事 地域全体で子供たちを見守る環境整備を加速させ、さまざまな困難を抱える子供たちが安心して過ごすことのできる居場所づくりを進める事業を創設する。
柿木議員 空知総合振興局は市町村や農協などと連携しながら障がいのある方々が幅広い職種で働くことができるよう、モデル事業に取り組んでいる。これらの事業を今後どう進めるのか。
高橋知事 新年度、人材が不足する介護分野への知的障害のある方々の参画に向けた技能習得支援事業を行う。障がいのある方々の就労の場の創出に一層努めていく。
柿木議員 「障がい者の起業に対するサポートがない」という指摘があるが、相談体制の充実をはじめ、資金面も含めた支援の枠組みを用意すべきではないか。
高橋知事 道では成功事例やノウハウ取得の研修などの情報を提供するとともに、関係部局や道労働局で構成する会議において、支援のあり方を検討していく。
柿木議員 TPP関連政策について、知事は道の要望がおおむね取り入れられたとしているが、農家からは不安の声が聞かれている。農業振興にどう対応する考えなのか。
高橋知事 競争力強化に向けた基盤整備の促進、ICTを活かした生産システムの導入、経営感覚に優れた担い手の育成、付加価値の高い加工食品の販売拡大などに積極的に取り組み、経営安定化を図る。
柿木議員 道内の漁獲量はピーク時の3分の1に減少するなど、漁業環境は極めて厳しい。老朽化した漁船の建造、漁協の冷凍・冷蔵施設の整備のための漁業近代化資金の需要は今後一層高まると予想されるが、どのように対応するのか。
高橋知事 国に対し、新たな財政支援措置を働きかけるなど、強い水産業づくりの実現に向け取り組んでいく。
柿木議員 これまで本道の広域性から他の学校への通学が困難な地域における、教育環境の維持の必要性を強く申し上げてきた。どう検討を進めるのか。
柴田教育長 再編基準の緩和や遠隔システムの積極的な活用などの考え方を取りまとめた。基準緩和の要件は引き続き検討するが、検討期間中の地域キャンパス校の新たな再編整備は行わない考えである。
柿木議員 「高校教育に関する指針」の検証は来年度も引き続き行うとされているが、どのように進めようとするのか伺う。
柴田教育長 新しいタイプの高校づくり、高校配置について、市町村や有権者から意見を伺いながら9月をめどに検証結果を取りまとめる。
柿木議員 私は以前の代表質問で、いじめ問題は社会全体で取り組む必要があり、条例を制定すべきだと申し上げ、その結果、平成26年に都道府県で第1号となる北海道いじめ防止条例が施行された。道内では今年度、11月末時点で前年度を上回るいじめ件数が報告されており、学年末そして新学期という時期に併せ、知事や教育長からメッセージを発信するべきと考えますが見解を伺う。
高橋知事 私自身のメッセージを4月に届けたいと考えている。いじめのない北海道の実現に向けて全力で取り組んでいく。
柿木議員 以前は障がいが重い子供は義務教育の就学が猶予または免除され、教育の機会を与えられなかったと聞いている。該当者の状況を把握し、就学の機会を提供すべきと考えるが、見解を伺う。
柴田教育長 昨年9月に重症心身障がい者がいる施設に対して実施した調査では、義務教育を受けていない方が482名、そのうち訪問教育を希望した方は202名だった。希望者に対し、速やかに訪問教育を実施していく。
柿木議員 本道の刑法犯認知件数は13年連続して減少し、昨年も前年に比べ4901件、12%減少したが、強制わいせつや放火、特殊詐欺は増加している。特に手口が巧妙化している振り込め詐欺への対策が求められる。新本部長として、道民の安全・安心の確保にどのように取り組んでいこうとしているのか、所見を伺う。
北村道警本部長 特殊詐欺については徹底的な検挙活動、被害を防止する水際対策などの取り組みを推進していく。子供や女性を対象とする犯罪については地域との合同パトロールや防犯教室などの対策を進め、1年以内に3回以上の交通事故を起こした高齢運転者に対しては運転免許の自主返納を促す。道民に安心して暮らせる北海道を実感していただけるよう全力で取り組む。
柿木議員 私は、北海道の将来を担う子供に関して、平成11年一般質問での児童虐待についての質問に始まり、これまでさまざまな議論をしてきた。
子供に関する課題は家庭や地域、学校とともに粘り強く対応する必要がある。子供は国の宝である。子ども子育て支援の推進に当たっては、子供たちが北海道の将来を担っていくということを念頭に置きながら取り組まれるよう申し上げる。
道内各地で、これからもこの土地で暮らしていけるのだろうかという切実な声を聞いている。行政のみならず、郵便局やコンビニエンスストアなど、地域にかかわるさまざまな機関が連携していく必要があり、地域の方々の要望に応えていくためには、道も変わっていかなければならない。
自民党・道民会議 一般質問項目