●平成27年第3回定例道議会 自民党・道民会議 代表質問要旨
自民党・道民会議 笠井 龍司 議員(釧路市選出)
「北海道創生」実現への将来展望を追及
昭和40年10月20日生まれ。釧路江南高校、明治学院大学法学部卒業。衆議院議員秘書、医療法人事務長、釧路市議を経て、平成23年道議会議員に初当選。2期目。現在、道議会環境生活常任副委員長、同産炭地域振興・エネルギー問題調査特別委員会理事、自民党道連政務調査会副会長など
第3回定例道議会は9月8日から10月2日まで開かれ、自民党・道民会議からは笠井龍司議員が9月10日に代表質問に立った。笠井議員は、高橋はるみ知事が描く北海道創生総合戦略の将来展望や、政策の柱に位置付ける食と観光に関する経済対策の具体的内容をはじめとする、道政上の課題について知事や教育長ら道理事者の見解を鋭くただした。
笠井議員 今年度中に策定する新しい総合計画の素案では、北海道の目指す姿や、実現のための政策展開の基本方向などが示されている。どのような観点で策定に臨んでいるのか。
高橋知事 人口減少や高齢化の進行などの時代の潮流を見据え、自然災害への備えやグローバル化への的確な対応、食・観光面での高いポテンシャルを活かして課題を克服していく意識の醸成が重要である。わかりやすい計画とすることを心がける。
笠井議員 総合計画を実現するには、さまざまな計画を横断的に束ね、各部が一丸となって推進していかないければならない。どのように計画の実行性を高めていくのか。
高橋知事 各種プログラムや特定分野別計画を一体的に推進し、年度内をめどに、政策評価の仕組みについての検討を進める。
笠井議員 道が示した人口ビジョンには、近年の出生率よりも高い数値が使われ、2040年に450〜460万人が維持されるとしている。現実を直視し、将来を展望していく必要があると考えるが、見解を伺う。
高橋知事 2019年度までに出生率を全国水準に引き上げるという目標を踏まえ、見通しを立てた。北海道の総力を結集した取り組みなしに実現できる水準ではなく、関係者との強固な連携のもと実現を目指していく。
笠井議員 従前の取り組みでは、人口ビジョンの実現は困難である。新たな発想、徹底した施策の重点化をオール北海道で推進しなければいけないと考えるが、どう取り組んでいくのか。
高橋知事 産学官で構成する「北海道創生協議会」を戦略推進の中核組織と位置付け、個々のプロジェクト推進に向けた仕組みづくりや、けん引役となる人材の確保に努めていく。
笠井議員 本道における札幌市への人口集中の割合は、2040年に40%を超えると推計される。どう対応していくのか。
高橋知事 札幌圏への人口流出に歯止めをかけるには、各地で就業の場を確保する必要がある。産業の活力向上を図るとともに、子育て支援や教育環境の充実、救急医療体制の構築などに全力で取り組んでいきたい。
笠井議員 来年度の地方創生交付金2000億円のうち、半分は地方が負担することになるため、地域からは「財政状況を考えれば、次の方策は見つけられない」という声がある。どう対応していくのか。
高橋知事 新型交付金を自治体の主体性を活かせる弾力性のある制度にすることや、自治体負担分を軽減する財政措置を講じることなどを、国に対し強く働きかけていく。
笠井議員 食の輸出拡大戦略は、物流網の整備、新たな市場への展開などを基本戦略としているが、全道的な取り組みがなければ4年後1000億円の達成は難しい。知事のトップセールスを含めたオール北海道で、輸出を拡大すべきではないか。
高橋知事 相手国の市場環境を踏まえ、北海道ブランドを積極的にPRするほか、オール北海道で輸出拡大に取り組み、生産者や事業者を支援していく。
笠井議員 外国人観光客を増やすには、CIQ体制や宿泊施設、移動手段などの受け入れ体制を早急に整備するとともに、北海道の魅力を伝えていく必要がある。どう取り組んでいくのか。
高橋知事 受け入れ体制の充実、ASEAN諸国へのプロモーションに加え、スキーやバードウオッチングなどのテーマ別の観光を促進し、欧米などからの来客の増加を図る。
笠井議員 道は、グローバルな人財を育成するため、育成プログラムの制定、基金の造成、高校生が海外との意見交換を行うアンダー18未来フォーラムなどの新規事業に取り組んでいる。プログラムの実現に向け、どう検討していくのか。
高橋知事 産学官で本道の課題、求められる人材像や、実現に向けた方策について検討し、来年3月をめどに「グローバル人財育成プログラム」(仮称)を、策定していく。
笠井議員 知事は、市町村のさまざまな行政ニーズに応じた職員の短期的な派遣を、来年度から実施するとしているが、どのように進める考えか。
高橋知事 意向調査では、約4割の市町村で派遣のニーズがあることを把握した。振興局の機能強化を考慮しながら、柔軟に対応していきたい。
笠井議員 新・北海道ビジョンには109の政策が掲げられている。例えば、北の住まいるタウンのモデルづくり、スマートシティのモデル形成の推進、エネルギー自給・循環システムの構築などは、相互に関連する政策であるが、個々に検討が進められている。どう効果的に推進していくのか。
高橋知事 公約の推進管理を所掌する部署と担当部の連携のもと、関連する政策を一つのパッケージとして捉え、点検や見直しを行う。
笠井議員 政府は、骨太の方針の中で「今後3年間は現行水準の一般財源総額を確保する」としていることをどう認識し、今後の財政運営にどう取り組んでいくのか。
高橋知事 地方団体の要望を、一定程度受け止めたものであると考えている。道の財政運営にあたっては、当面は収支不足が見込まれていることから、限られた財源を活用しながら持続可能な財政構造の確立に努める。
笠井議員 骨太の方針では、行政コストの見える化、マイナンバー制度導入を突破口とするさらなるIT化など、今後5年間で地方自治体が取り組むべき事項が示されている。地方行政改革にどう取り組んでいくのか。
高橋知事 骨太の方針では、PDCAサイクルの抜本的強化や地方公会計の整備に伴う公共サービス情報の開示、ICTに着目した業務改革などが示された。これらを考慮の上、来年度以降の取り組みをまとめる。
笠井議員 道は小規模企業に対し、経営診断や助言、ビジネスマッチング、相談窓口の設置などに取り組んできたが、効果が十分に現れていない。どう振興施策を進めていくのか。
辻副知事 これまでの取り組みは一定の成果があったものと考えるが、人口減少による影響は大きく、事業承継や創業支援に向けた体制の整備など、事業活動を継続するための効果的な施策の推進に努めていく。
笠井議員 JR北海道は無人駅の廃止や有人駅の無人化、留萌線の来年度中の廃止提案など、道内線区の見直しを加速させている。道は市町村や交通事業者などと、持続可能な公共交通のあり方について検討すべきではないか。
高橋知事 JR北海道再生推進会議の提言も踏まえ、国や市町村、交通事業者、経済界などに参画いただく会議の場を、北海道運輸交通審議会の中に設置したいと考えている。
笠井議員 経済発展のためには新千歳空港の機能強化が不可欠であり、道は深夜・早朝時間帯の発着枠拡大に向け、千歳・苫小牧の地域住民と協議し、現行6枠から30枠へ拡大することで最終合意した。どのように利用促進に取り組んでいくのか。
高橋知事 国際線やLCCを含めた誘致活動に取り組むとともに、受け入れ体制の整備、2次交通の拡充についての航空会社の意向や利用状況の把握に努める。
笠井議員 陸上自衛隊北部方面隊や道は8月、太平洋沿岸での大規模地震・津波災害を想定した防災訓練「ノーザン・レスキュー」を実施した。在日米軍と連携した救出救助や物資輸送などが行われ、大変有意義なものと考えているが、どう認識しているのか。
高橋知事 東日本大震災の教訓からも、住民を守るために、米軍などの外国からの支援が必要な場合もある。本道の防災対策上、大変意義のある取り組みと考えている。
笠井議員 泊地域の緊急時対応についての中間とりまとめでは、避難行動要支援者の名簿作成がUPZ圏内9町村で進んでおらず、厳寒期の暴風雪下の住民避難や安定ヨウ素剤配布などの課題も残されている。今後どう対応するのか。
高橋知事 要支援者名簿の作成などについて、さらなる取り組みが求められており、国や関係町村と連携を強化しながら、原子力防災会議の了承が早期に得られるよう取り組んでいく。
笠井議員 道は原子力災害対策重点区域が30㌔圏内に拡大された平成24年以降、3回の防災訓練を実施し、今年度も10月に予定しているが、どのような訓練を行うのか。
荒川副知事 PAZ、UPZの地域区分に応じた段階的な住民避難、緊急被ばく医療活動、集落の孤立を想定した空路・海路による避難、観光客などの一時滞在者の円滑な避難の訓練に取り組む。
笠井議員 釧路市で進められている炭鉱技術を海外に伝える研修事業では、ベトナム、中国から延べ2315人の研修生を迎え入れ、両国では生産性、安全性の向上が図られた。経済産業局による来年度予算概算要求額が、今年度より2億円減ったことを含め、国の動きをどう受け止めているのか。
高橋知事 概算要求は国の財政状況を反映して厳しい内容だが、事業継続が要求され、必要性について一定の理解を得えられたと考えている。予算確保に向け、粘り強く働きかけていく。
笠井議員 建設業の経営者からは「工事発注量の減少が顕著で先行きが暗い」という切実な声があり、補正予算の迅速な執行に努めるとともに、国に対して事業の追加措置を要望し、事業量の確保を図るべきと考える。建設業の振興に向け、どのように取り組んでいくのか。
高橋知事 国土強靭化に資する社会資本整備に必要な予算を国に強く求めるなど、道単独費を含めた安定的な公共事業予算の確保に努める。
笠井議員 本道では縄文文化やアイヌ文化、クラークなどの開拓使がもたらした欧米文化などにより、開放的で多様性のある文化が育まれてきた。北海道新幹線開業に合わせ、本道の文化と自然を映像などを活用して発信すべきではないか。
高橋知事 リニューアルした北海道博物館、北海道歴史・文化ポータルサイト「あかれんが」などで情報を発信している。10月のミラノ国際博物館「北海道の日」向けに、英語や中国語などで北海道の魅力を紹介する映像を新たに作成する。
笠井議員 道は平成22年度から5年間を緊急対策期間として、エゾシカの捕獲を強化したが、生息数は依然として高い水準にある。どう取り組んでいくのか。
高橋知事 5年間の取り組みにより、推定生息数はピークの63万頭から昨年度末には48万頭へ減少した。国の制度を活用し、本年秋からは道自らも捕獲事業を展開する。
笠井議員 道は地域医療構想の策定に向け、2次医療圏ごとの必要病床数の推計を公表した。将来の医療提供体制の確保に向け、どのような課題が見えてきたのか。また、その課題にどう取り組んでいくのか。
高橋知事 今後増加が見込まれるリハビリテーションを行う回復期病床の確保、慢性期病床からの受け皿となる地域包括ケアシステムの構築などが課題と認識している。地域の実情を反映した構想策定に取り組む。
笠井議員 本道の地域医療には、医師不足を含め多くの課題があるが、構想の実現に向けてどのように取り組むのか。
山谷副知事 各医療機関による自主的な取り組みはもとより、道としても各地域の調整会議において具体的な役割分担を行うとともに、医療機能の転換や医療従事者の確保・要請への支援を行っていく。
笠井議員 道は年内に「北海道子どもの貧困対策推進計画」を策定するとしている。民間の支援団体や当事者を含めたネットワークを構築し、効果的な取り組みを講ずる必要があるのではないか。
高橋知事 計画策定にあたり、当事者、支援団体、関係機関などの幅広い層から意見聴取を行っている。官民挙げたネットワークづくりについて検討を進め、貧困が世代を超えて連鎖することなく、全ての子どもが夢と希望を持てる社会の実現を目指していく。
笠井議員 要介護認定3以上の人の負担緩和を目的に商品券を交付する同事業は、4月1日時点で認定されている人が対象で、それ以降の認定者は対象にならないことへの疑問の声が寄せられている。直ちに対応すべきと考えるが見解を伺う。
高橋知事 4月1日以降に認定を受けた人から、対象とするよう求める声が寄せられることから、市町村の協力を得て柔軟な運用方法を検討していく。
笠井議員 本道では農畜産物の付加価値が全国平均を下回っており、農業従事者の減少、収益性の伸び悩みや生産費の上昇による経営不安など、さまざまな課題がある。本年度を期限とする第4期計画を、どう評価しているのか。
荒川副知事 道産米の道内食率が9割を超え、パンに適した小麦が普及し、農業生産法人が全国最多3000となるなど、一定の成果が得られた。新規就農者の確保、付加価値向上へのさらなる取り組みが課題となっている。
笠井議員 本道農業の振興を図るためには、農畜産物の付加価値を向上させ、新たな需要を創り出すことが大切である。第5期計画の策定にどのような考えで臨むのか。
高橋知事 生産基盤の強化と国内外の食市場に対応した供給体制づくりに向け、超省力化を可能にするスマート農業、地域を支える中核的な経営体の育成、6次産業化の加速や農畜産物の輸出促進に取り組んでいく。
笠井議員 道は異常気象にも強い北海道農業を確立するため、農家負担の軽減を図りながら基盤を整備するパワーアップ事業に取り組んできた。今後も計画的に進めるべきと考えるが、見解を伺う。
高橋知事 冷湿害や集中豪雨などに対応しながら安全で良質な農作物を安定的に生産する上で、農業農村整備は重要な役割を果たしている。地域からの意見を踏まえ、効果的な進め方を検討していく。
笠井議員 ロシア200海里水域内での流し網漁が、ロシアの法律により来年1月から禁止される。道の対策を地元漁業者の要望を十分反映し、地域への影響を最小限にとどめるよう万全を期したものにすべきである。どのように取り組むのか。
高橋知事 代替漁業への転換や増養殖の推進などの「漁業対策」、加工原料の確保や運転資金の貸付などの「関連産業対策」、雇用の維持や職業訓練などの「雇用対策」、消費の喚起や観光振興などの「地域振興対策」の4つの柱を取りまとめた。道東の水産業が将来にわたって発展できるよう、全力で取り組んでいく。
笠井議員 未来につなぐ森づくり推進事業は森林資源の公益的機能を発揮する循環モデルの構築と、無秩序な伐採防止と的確な更新を目指して、平成23年度から進められている。より一層の充実が図られるべきではないか。
高橋知事 23年度以降に植林された面積の約7割で、この事業が活用されている。伐採と植林に必要な作業を一体的に行うなど、未来につなぐ森づくりを積極的に進めていく。
笠井議員 今年度の全国学力・学習状況調査では、2教科で全国平均を上回ったが、依然として全国平均を下回る状況にある。地域によって保護者や住民の間に子どもの学力に対する認識には温度差があり、課題が十分に理解されているとは言えない。啓発に努めるべきと考えるが、見解を伺う。
柴田教育長 保護者や住民と課題や改善策を共有するよう指導助言するとともに、家庭学習のあり方を示した保護者向けの資料を新たに作成する。
笠井議員 道内の中学校卒業者数は、ピークだった昭和63年の半数以下に減った。通学が困難な地域にある高校の教育環境の充実を図る方策を、早急に検討していくべきではないか。
柴田教育長 庁内に検討組織を設置し、年度内をめどに方向性を取りまとめる。
笠井議員 道教委の指針では「中等教育学校は市町村での設置を促進する」としている。1学年2〜3クラスで、常識的な範囲の時間で通学できることが望ましいが、条件を満たす市町村は極めて少ない。保護者や生徒の意識調査を行うなどして、中等教育学校のあり方を見直すべきではないか。
柴田教育長 市町村の意向を調査するなど、設置促進に努めているが札幌以外では進んでいない状況にある。保護者などの意向把握の方法を含め、あり方を検討する。
笠井議員 振り込め詐欺などの特殊詐欺の被害は増加し、飲酒運転による事故も後を絶たない。道警は警察署の統合計画を検討しているが、地元が不安を抱かないよう慎重に取り組むことが重要である。どう進めるのか。
室城道警本部長 本道には69の警察署があり、再編整備の基本的考え方は、小規模警察署を隣接する警察署に統合し、地域の警察力を高めるというものである。これにより、重大事件・事故が発生した際の大量動員を可能にする。交番・駐在所は現体制のまま地域に密着した活動を行う。犯罪や事故のない安心して暮らせる北海道の実現に向け、一丸となって取り組んでいく。
笠井議員 道が発表した2025年における必要病床数の推計では、2013年の半分以下になる2次医療圏が3カ所、3割以上減るのは5カ所だった。地域医療構想調整会議では「こんな状況では病院経営は破たんする」という意見が相次いだが、地域の不安にどのように応えるのか。
高橋知事 地域の実情を踏まえた医療提供体制と地域包括システムの構築に向け、人材の確保、在宅医療と介護の連携、病床機能の転換などの課題について全力で取り組んでいく。
笠井議員 地域社会を担う個性豊かな人材を育成するため、総合教育会議の場で中等教育学校について検討する必要があると考えるが、見解を伺う。
柴田教育長 中高をはじめとする学校間連携のあり方などについて協議を深め、さまざまな機会を通じて北海道を支える人材の育成に取り組んでいく。
自民党・道民会議 一般質問項目